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期待される研究成果

 概要で示した3つのテーマ毎に期待される効果と本事業の「外部評価体制」を記載する。

1.認知的インタラクション解析

 イヌはヒトとの共進化の過程でヒトと同様の視線の社会的利用の能力を獲得した。この能力は、チンパンジーよりも高く、ヒトとイヌに特化した非言語コミュニケーション能力である。イヌとヒトのインタラクション解析により非言語コミュニケーションの成立メカニズムが明らかになることで、1)合格率が3割にも満たない盲導犬などの作業犬の訓練効率を飛躍的に向上できる、2)イヌとのインタラクションによって改善がもたらされる自閉症などの発達障害児に対しての効果的プログラムの作成が可能となる。さらにはITを介したヒトのコミュニケーションをより潤滑にするデバイスの作成にもつながり、産業効果が期待される。

2.共進化遺伝子の同定

 上記インタラクションに関する遺伝子の同定は、同じ能力を共進化で獲得したヒトにおけるコミュニケーション障害や社会性に障害をかかえるヒト原因遺伝子の同定に向けた基盤を提供できる。このプロセスで日本犬に着目した。祖先種を共有するオオカミにはヒトとの視線コミュニケーションができないことから、一般イヌとオオカミとの間での遺伝的推移によって、イヌが能力を獲得したと考えられる。イヌの網羅的遺伝子解析によって、日本犬はオオカミに近縁であることが示された(Science 2004)。すなわち、ヒトとの共進化にかかわる遺伝子を同定するにあたり、日本犬の存在はその中間に位置するという遺伝的特性を有しており、日本犬の研究が鍵を握る。さらにヒトとイヌが獲得した家畜化遺伝子の同定はすなわち新たな家畜資源の作成に直結する。アフリカなどの特殊な環境でもヒトに懐き飼育容易となる動物の作出は、栄養問題をも解決する。またヒトとの共進化による疾患関連遺伝子の同定は、医療分野にも直結する成果をもたらす。昨年度まで私立大学戦略的研究基盤形成支援事業において本学にイヌの遺伝子バンクを確立し、各種遺伝関連疾患を持つイヌを中心に約1万6,000検体のイヌのDNAを収集した。これら遺伝病の原因遺伝子の解明は、診断並びに新たな治療法の確立に大きく貢献する。

3.微生物クロストーク

 イヌを中心に動物の飼育による発達期の児童への影響をコホート研究としてまとめるべく、すでに共同研究を実施している。核家族化がすすんだ家庭における動物の重要性、特に共感性やコミュニケーションスキル、さらには喘息やアトピーの発生率との関連性を明らかにし、家庭動物の飼育に向けた社会的提言を行う。疫学的に関連の見られた表現型を、マウスをモデルに用いて、その効果のメカニズムを解明し、さらに動物とヒトとで共有する有用な微生物の同定を行う。本学ではこれまで,無菌マウスを用い、ヒトや動物から採取した細菌叢を定着、その機能実証に成功してきた。また世界に類をみない、マウスの完全人口哺乳にも成功し、新生児期の細菌叢環境を自由に操作できる環境を整えてきた。この強力な基盤で、ヒトや動物から採取した菌の評価を行い、有用菌の同定を目指す。また質量分析を用いた微量分子同定にも成功し、これまで数多くの特許ならびに、分子同定の実勢を保有することから、有用菌のみならず、分子の解明までが可能である。有用菌や分子が同定されれば、それを基にヒト健康にむけた食品やサプリメントの開発を目指す。

外部評価体制

 本事業に関しての将来性や社会に対する効果に関しては、動物アレルギー検査㈱の増田健一社長との綿密な打ち合わせの上で計画した。また、本事業において各研究チームは研究成果に対して自己点検を行い、自己点検報告書を本学の「研究推進・支援本部」に対して3年目終了時(中間報告)及び5年目終了時(最終報告)に提出する。また、本事業の進捗状況及び成果について、外評価委員による外部評価を毎年行う。これらを取りまとめた報告書は「研究推進・支援本部」から「学術研究戦略会議」に報告され、それに基づき次年度の研究継続の可否や研究費の配分額が決定される。以上のようにこれらの外部機関との連携を図り、さらにはこの外部評価を受けつつ、社会のニーズに適した研究を展開する準備が整っている。

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